ダイビングスキル
2023年07月13日

ダイビング中の安全停止とは?必要な理由やタイミングについて解説

安全停止するダイバー
ダイビングは、普段は見られない海の世界を冒険できる人気のマリンアクティビティです。しかし、海中は陸上と環境が大きく異なるため、安全を期してダイビングを行わなければいけません。

安全なダイビングに欠かせないのが、「安全停止」と呼ばれるテクニックです。今回は、ダイビング中の安全停止が重要な理由やタイミング、正しく行うポイントについて解説していきます。

 

ダイビング中の安全停止とは

安全停止とは、水深3〜6メートルで3分間程度停止する動作のことであり、ダイビングが終わって浮上する前に行われます。ダイビング中は圧の高い窒素などの空気を吸い込んでいるため、その空気を身体に溜め込んだまま浮上すると、体内で膨張してしまう可能性があります。水深の浅い場所で停止することで、体内に溜まった窒素などの空気を安全に排出できるのです。

ダイビング中に行う安全停止は、急激な浮上によるさまざまなリスクを予防するための重要なステップです。ダイバーが安全かつ快適に水面に戻るのには欠かせない動作であるため、すべてのダイバーは正しい安全停止の方法を覚える必要があります。

減圧停止との違い

ダイビング中に停止する動作には、「減圧停止」と呼ばれるものもあります。安全停止と減圧停止は混合されやすいですが、まったく異なるものであるため、それぞれの特徴と違いを理解しなければいけません。

減圧停止とは、水深3メートルまで毎分10メートル以下の速度で浮上し、それぞれの深度に合わせて適切な時間停止する動作です。安全停止と同じく体内の窒素を放出する目的がありますが、安全停止よりも停止する回数と時間が多い特徴があります。

減圧停止が安全停止よりも複雑である理由のひとつが、テクニカルダイビングで主に使われるテクニックであるためです。減圧停止は、無減圧潜水の範囲を超えてしまった場合に行うテクニックであり、通常のダイビングでは無減圧潜水の範囲を超えることはほとんどありません。テクニカルダイビングを行わない方は安全停止をメインに、テクニカルダイビングも行う方は双方の正しい方法を区別して理解しましょう。

 

安全停止が必要な理由

安全停止が必要な理由には、以下の2つが挙げられます。

 

  • 減圧症を防ぐ
  • 窒素酔いを防ぐ

 

減圧症を防ぐ

減圧症とは、ダイビングによる深度の変化により、体内の空気が気泡をつくる病気のことです。ダイビング中は通常の空気ではなく、タンクに入った高圧の空気を吸います。浮上により、身体にかかる圧が弱くなることで体内の空気が気泡になり、体内組織を圧迫したり血液からの酸素供給を妨げたりといったさまざまなリスクを引き起こします。

減圧症は関節痛や筋肉痛、めまい、意識障害などの症状を引き起こし、最悪の場合命にかかわる危険な病気です。しかし、安全停止を行うことで体内の空気を放出できるため、減圧症を防げます。

窒素酔いを防ぐ

窒素酔いとは、圧の高い窒素を摂取することで起こる中毒症状です。ダイビング中に吸う空気の大部分を占めるのが窒素であり、高圧の窒素を摂取するとアルコールに酔ったような状態になってしまいます。

窒素酔い自体に大きな危険はありませんが、窒素酔いになると思考力が低下したり気が大きくなったりしてしまい、安全なダイビングをするための正しい行動や判断ができなくなるかもしれません。安全停止を行うことで体内の窒素が放出できるため、窒素酔いを防げます。

 

ダイビング中の安全停止のタイミング

安全停止の適切なタイミングは、基本的にダイビングの最終段階です。もっとも深い深度から浮上する際に行う減圧停止とは異なり、安全停止はダイビングが終了する前の水深が浅い場所で行われます。インストラクターやバディが安全停止のハンドシグナルを行ったら、中性浮力をとって数分間停止する準備を行いましょう。

 

ダイビング中に安全停止を正しく行うポイント

ダイビングに欠かせない安全停止を正しく行うポイントは、以下の3つです。

 

  • 適正なウエイト選びを行う
  • 目線を真正面にする
  • 呼吸で浮力を微調整する

 

適正なウエイト選びを行う

正しい安全停止に重要なのは、中性浮力をとりながら同じ水深の場所で留まることです。しかし、適切なウエイトを身につけていなければ、浮きやすかったり沈みやすかったりするため、中性浮力をとれません。ダイビング中は必ず適切なウエイトの重さや数を選び、中性浮力がとれるようにしましょう。

目線を真正面にする

水中での身体の浮き沈みには、目線と頭の位置が大きく関係しています。目線が下がると身体は沈みやすく、反対に目線が上がると身体は浮きやすくなるため、安全停止中は目線を真正面に保ちましょう。海底の景色が美しいからといって下を見つめていると、安全停止中にもかかわらず身体はどんどん下に沈んでしまいます。

呼吸で浮力を微調整する

安全停止を行うには、「浮く力」と「沈む力」が均等に釣り合ったときの状態である中性浮力をとることが欠かせません。中性浮力はウエイトの重さやBCD内の空気の量で調整しますが、わずかな調整には呼吸が効果的です。空気を吸って肺を大きくすると身体は浮き、空気を吐いて肺を小さくすると身体は沈みます。この特徴を理解して、呼吸で浮力を微調整しながら中性浮力を保ち、安全停止を行いましょう。

 

ダイビング中に安全停止を行う注意点

ダイビング中に安全停止を行う場合、以下の4つのポイントに気をつけましょう。

 

  • きっちり止まることは難しい
  • ゆっくり深い呼吸を行う
  • 正しいタイミングと深度で行う
  • 安全停止のあとはゆっくり浮上する

 

きっちり止まることは難しい

安全停止といっても、ぴったり止まる必要はありません。インストラクターであっても、安全停止中でも水深が多少上下してしまうものです。しかし、上下の幅が大きいと深度が変わるため、適切な安全停止ではなくなります。

安全停止はきっちり止まろうとする必要はありませんが、深度が変わらないよう上下の幅に意識して停止するよう心がけましょう。インストラクターやバディの位置に合わせると、正しい安全停止が行えます。

ゆっくり深い呼吸を行う

安全停止のハンドシグナルが出ると、「きちんとできるのだろうか」と緊張状態になり、呼吸が乱れるダイバーも少なくありません。しかし、浅い呼吸や速い呼吸では中性浮力をうまくとれず、身体が浮いたり沈んだりしやすくなります。そうなると焦ってさらに呼吸が乱れ、より中性浮力がとりにくくなる悪循環に陥ります。

安全停止中は、ゆっくり深い呼吸を行うことで、リラックスして中性浮力をとることが可能です。中性浮力は安全停止を行うのに欠かせないため、ゆっくり深い呼吸を意識しましょう。

正しいタイミングと深度で行う

安全停止は、ダイビング終了前に水深3〜6メートルで3分間程度停止すると決められています。ダイビング終了前に行わなければ、安全停止をしたあとにも高圧の空気が体内に入る可能性があるため、意味がありません。

さらに6メートルより深い場所で安全停止をした場合、浮上中に体内に空気が入る可能性もあります。反対に3メートルより浅い場所での安全停止は、その間に減圧症や窒素酔いなどの症状を引き起こすケースもゼロではありません。安全停止は、正しいタイミングと深度で行いましょう。

安全停止のあとはゆっくり浮上する

安全停止が完了したあとは、ゆっくり水面まで浮上しましょう。急浮上すると耳を痛めるなど身体にさまざまなリスクが生じてしまうため、1分間に18メートル浮上する速度よりもゆっくり、もしくはダイブコンピューターが指示する速度で浮上しましょう。

 

まとめ

安全停止とは、ダイビング中の減圧症や窒素酔いなどのリスクを予防するために必要なテクニックです。水深3〜6メートルの場所で3分間停止することで、身体に溜まった高圧の空気を放出できます。今回ご紹介した方法と注意点を参考に、正しい安全停止を行いましょう。

安全停止以外にも、安全なダイビングのためにはさまざまなテクニックがあります。安全に楽しめるダイバーになるには、そのような知識や技術を身につけて、ダイビングライセンスを取得するのがおすすめです。

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