ダイビングスキル
2023年07月03日

ダイビング中の窒素酔いとは?危険な理由や症状・対処法を紹介

ダイビングをするダイバー
深い海の中を潜って青の世界を楽しむダイビングは、陸上とさまざまな環境が異なるため、身体に異常や異変をきたすことも少なくありません。ダイビング中に起こる身体の異変として、「窒素酔い」と呼ばれる症状が挙げられます。

今回は、窒素酔いの概要や原因、対処法や予防法について解説していきます。安全にダイビングを楽しみたい方は、ぜひ参考にしてください。

 

ダイビング中に危険な窒素酔いとは

窒素酔いとは、高分圧の窒素を摂取することで起こる中毒症状です。海中では通常の呼吸ができないため、空気の入ったタンクを背負ってダイビングを行います。タンクの中には陸上と同じ種類の空気が入っており、もっとも多くの割合を占めるのが陸上と同じ窒素です。ダイビングで深く潜ると、水圧の影響から体内に窒素が大量に入り、窒素酔いを引き起こしてしまいます。

窒素酔いが起こる原因

窒素酔いの原因は、高圧の窒素を体内に取り込むことです。窒素は陸上の空気にも一番多く含まれていますが、陸上で窒素酔いを起こすことはほとんどありません。しかし、海の中を深く潜るダイビングは深度が高くなるほど圧力がかかり、通常よりも圧力が高い窒素を吸うため、窒素酔いが起こってしまうのです。

窒素酔いは、ダイビングの深度が高ければ高いほど起こりやすくなります。とくに水深20mを超えると窒素中毒が起こりやすくなるため、20m以上潜る場合は窒素酔いに注意しましょう。

窒素酔いが危険な理由

窒素酔い自体は、身体にとって大きな危険を及ぼすものではありません。しかし、窒素酔いの症状が起こると通常どおりの行動がしにくくなるため、トラブルが起きやすく危険だと言われています。窒素酔いが原因でパニックになり、重大な事故につながる危険性も考えられます。

 

窒素酔いの症状

窒素酔い自体は、命に関わるような危険なものではありませんが、窒素酔いが原因で起こる症状はダイビング中に危険を及ぼします。窒素酔いの主な症状は、以下のとおりです。

 

  • 高揚感を感じる
  • 幸福感を感じる
  • 身体の動きが鈍くなる
  • 思考力や判断力が低下する
  • 方向感覚が失われる
  • 行動能力が失われる
  • 反応が遅くなる
  • 意味もなく笑ってしまう
  • 気分が落ち込む
  • 気が大きくなる
  • 不安を感じる
  • パニックになる

 

窒素酔いは、アルコールに酔った状態に似ていると言われています。症状はダイバーや深度などによって異なりますが、20m以上の深度で上記いずれかの症状が見られたら、窒素酔いの可能性が高いです。

これらの症状のままダイビングを続けると、エアーが少ないことに気づかなかったり、帰る方向を見失ったりなどさまざまな危険を及ぼします。窒素酔いの症状によって安全にダイビングをすることが難しくなってしまうので、自分やバディが窒素酔いであると感じた場合は、ただちに適切な対処を行いましょう。

 

ダイビング中に窒素酔いが起こったときの対処法

窒素酔いの適切な対処法は、浅い場所に戻ることです。窒素酔いの主な原因は圧の高い窒素を吸っていることなので、深度を下げて浅い場所に移動すれば窒素酔いの症状はすぐに治ります。窒素酔いは自然に消える特徴がありますが、深度を上げても症状が残っていたり、違和感があったり場合は、ダイビングを終えて病院に相談しましょう。

ただし、窒素酔いは本人の自覚が難しい症状です。バディや一緒に潜っているダイバーが上記でご紹介した症状になっている場合は、一緒に浅瀬に移動するようにしてください。窒素酔いの症状によっては、思いもよらない行動を起こし危険が生じる可能性もあるため、コミュニケーションをとりながら浮上を手伝いましょう。

急な浮上は「減圧症」に気をつけよう

窒素酔いの対処法には浮上が大切ですが、急に浮上すると「減圧症」が発生する可能性があります。減圧症とは、深い場所から浅い場所に急に移動することで、体内の窒素が膨張する病気です。

減圧症が起こると身体の痛みやめまい、呼吸困難や意識障害などの症状が現れ、命の危険を伴うこともあります。減圧症は急浮上が原因で起こるため、窒素酔いの解消には焦らずゆっくりと浮上しましょう。

 

ダイビング中の窒素酔いを防ぐ方法

窒素酔いは、以下の3つのポイントを守ることで予防できます。

 

  • いきなり深く潜らない
  • 体調管理に気をつける
  • 特別に混合された気体を使う

 

いきなり深く潜らない

窒素酔いを防ぐためには、いきなり深く潜らないことが大切です。とくに初心者が深く潜ると、窒素酔いの症状が起きやすいと言われています。少しずつ深度を増やすことで、身体だけでなく精神的に余裕が生まれ窒素酔いを防げます。

ただし、人によっては水深20m未満でも窒素酔いが起こるケースがあります。深度が深くなくても、ダイビングを行うときは、窒素酔いが起こる可能性があることを頭に入れておきましょう。

体調管理に気をつける

窒素酔いは「麻酔作用」と呼ばれる症状であるため、薬やアルコールの影響を受けやすいです。前日に薬を飲んだりお酒を飲みすぎて二日酔いだったりすると、窒素酔いが起こる可能性が高まります。疲れが溜まっていても窒素酔いを引き起こすケースがあるので、ダイビングの前日・当日の体調管理には充分に気をつけましょう。

特別に混合された気体を使う

ダイビングに慣れると、さらに深い場所まで潜りたいと思う方も少なくありません。深く潜るダイバーは窒素酔いになる確率が高くなるため、窒素の代わりにヘリウムか水素で希釈した低濃度の酸素を使って呼吸します。ヘリウムや水素は中毒症状を起こさないため、窒素酔いのような症状が起こりません。

ただし、特別に混合された気体はどのダイバーでも使えるわけではありません。ダイビングショップによっては用意がない可能性もあるので、注意が必要です。

 

窒素酔い以外のダイビング中の危険な症状

窒素酔い以外にも、ダイビング中にはさまざまな危険な症状が起こる可能性があります。安全に楽しくダイビングを楽しむためには、窒素酔いと併せて以下の症状にも気をつけましょう。

 

  • 肺の膨張障害
  • スクイズ
  • リバースブロック

 

肺の膨張障害

肺の膨張障害とは、肺の空気が膨張する症状です。空気が肺と肺膜の間に漏れると、胸痛を感じることがあり、空気が心臓や血管を圧迫すると、息苦しくなる症状が起こります。最悪の場合は肺胞が破裂することもあり、ダイビング中に起こる障害で最も重篤なもののひとつだと言われています。

肺の膨張障害は、ダイビング中に息を止めたまま浮上することで起こります。息を止めて浮上すると肺に入った空気は膨張し、肺の膨張障害を引き起こしてしまうのです。肺の膨張障害が起きないよう、ダイビング中は深くゆっくりとした呼吸を続けることを心がけましょう。

スクイズ

スクイズとは、圧力のバランスがとれないことで生じる痛みや不快感のことです。水深が深くなっても体内空間の圧力は変わらないため、周囲の圧力との間に差が生じ痛みや違和感が起こります。

スクイズが起きた場合、体内空間の圧力を上げることで解消できます。体内空間の圧力を上げるための主な手段のひとつが、耳抜きです。耳抜きを行うことで鼓膜内外の圧力の差が等しくなり、スクイズが解消されます。

耳以外にも、サイナスと呼ばれる副鼻腔や虫歯の穴で、スクイズが起こることもあります。サイナスのスクイズは耳抜きで治りますが、虫歯のスクイズは治療しなければ治らないため注意しましょう。スクイズを起こした場合、水深を上げることで痛みや違和感を解消することも可能です。

リバースブロック

リバースブロックとはスクイズの逆の症状であり、体内の圧力が周囲の圧力よりも高くなることで痛みや違和感が生じることです。浮上する際に耳やサイナスから空気を抜くことができないと、リバースブロックが起こります。リバースブロックを解消するには水深を下げる必要があり、浮上しようとしても耳が痛くなり浮上ができません。

リバースブロックの原因には、風邪気味や寝不足などの体調不良が挙げられます。そのため、体調の悪いときにはダイビングを避け、ダイビングをする場合は無理やり潜降するのを避けましょう。

 

まとめ

ダイビング中に起こる窒素酔いとは、高圧の窒素を身体に取り込むことで起こる中毒症状のことです。窒素酔いが起こるとアルコールに酔ったような状態になり、思考力の低下やパニック状態など、さまざまな症状が起こります。窒素酔い自体に大きな危険はありませんが、窒素酔いによって起こる症状は危険を引き起こすため、正しい対処法や予防法を使って対処しましょう。

ダイビング中は窒素酔い以外にも、さまざまな症状が起こる可能性がありますが、正しい知識があればこのような危険を避け海の中を楽しめます。安全に楽しめるダイバーになるには、ライセンスの取得がおすすめです。「東京ダイビングスクール Beyond」では、世界基準以上のスキルを、19,800円で学べますので、安全に楽しくダイビングを行いたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。