ダイビングに必須の中性浮力とは?苦手な人でも上手くできるコツを紹介
海の中を宇宙空間のように漂うスキューバダイビングでは、美しい海の世界を楽しめます。しかし、宇宙空間のような無重力感を味わうには、「中性浮力」と呼ばれるスキルを身につけなければなりません。しかし、初心者ダイバーの中には、中性浮力が苦手な方も多いようです。今回は、中性浮力が苦手な方でも上手くできるコツについて解説していきます。
Contents
中性浮力とは
中性浮力とは、水の中で浮きも沈みもしない状態のことです。ダイビング中は身につけているウェットスーツなどに浮力があるため、身体には浮こうとする力が生じます。しかし、ウエイトや機材などの重さによって、沈んでいけるのです。浮く力と沈む力が均等に釣り合ったときの状態が、中性浮力です。
中性浮力がとれないと、せっかくの美しい海の世界を存分に楽しめません。ダイビングを楽しむために必須のスキルであり、初心者ダイバーがまず覚えるべきスキルのひとつが、中性浮力なのです。
中性浮力が必要な理由
中性浮力が必要な理由には、以下の5つが挙げられます。
- エアー持ちが良くなる
- さまざまな地形を楽しめる
- 急浮上を防げる
- 砂の巻き上げを防ぐ
- ロープを使わず安全停止ができる
エアー持ちが良くなる
水中では通常の呼吸ができないため、ダイビング中は空気の入ったタンクを使って呼吸を行います。タンクの中のエアーが切れるとダイビングを続けられないため、できるだけ長くダイビングを楽しむためにはエアーをなるべく保つことが重要です。
中性浮力がとれないと、自分の力で浮くために必要以上に身体を動かしてしまうため、多くのエアーを消費してしまいます。中性浮力が上手にとれるようになると無駄に身体を動かす必要がないため、エアーの持ちが良くなり長くダイビングを楽しめます。
さまざまな地形を楽しめる
海の中にはさまざまな地形があり、その地形を楽しむのもダイビングの醍醐味のひとつです。中性浮力がとれることで、どういった地形であってもダイビングを楽しめます。
たとえば「ドロップオフ」と呼ばれる水中で崖になっている地形では海底が見えないため、中性浮力がとれなければ「奥底まで沈んでしまうのではないか」と恐怖に感じてしまう方も少なくありません。実際、中性浮力がとれないとドロップオフの場所ではどんどん沈んでしまうため、沈まないように身体を動かし、多くのエアーを消費してしまいます。
中性浮力がとれていれば、どんな地形でも楽に優雅に泳ぐことが可能です。気持ちにも余裕を持てるため、恐怖感を払拭してダイビングを楽しめます。
急浮上を防げる
中性浮力が上手くとれないと、急に浮上してしまうトラブルが起こってしまうかもしれません。ダイビング中の急浮上は、肺に甚大なる悪影響を与える減圧症などの原因になって非常に危険です。中性浮力のとり方をマスターしていることで、浮力をコントロールできて急浮上を防げます。
浮上のスピードは、1分間に18m浮上する速度よりも遅く、もしくはダイブコンピューターが指示する速度が適切だといわれています。中性浮力をマスターして、正しい速度で安全に浮上しましょう。
砂の巻き上げを防ぐ
中性浮力がとれず海底に沈みながら移動すると、海底にある砂を巻き上げてしまいます。砂を巻き上げると後ろの方は何も見えず、海の中の美しい景色を楽しめません。写真を撮ることも邪魔してしまい、砂を巻き上げるダイバーは多くの方に迷惑をかけてしまいます。ほかの方の迷惑にならないためにも、中性浮力をしっかりとって、砂の巻き上げを防ぎましょう。
ロープを使わず安全停止ができる
安全停止とは、ダイビングの終了前に水深3〜6mほどの深度で数分間停止することです。安全停止を行うことで減圧症のリスクを減らすことができるため、ダイビングの終わりには安全停止が欠かせません。
中性浮力がとれないと、安全停止中も浮いたり沈んだりしてしまうため、ロープなどをつかむ必要があります。ボートを固定しないドリフトダイビングなどでは、中性浮力がとれないとダイビングに参加することすらできません。
中性浮力を上手にとるための7つのコツ
中性浮力はダイビングに必須のスキルですが、苦手とする初心者ダイバーも少なくありません。しかし、コツさえつかめば、苦手な方でも上手に中性浮力をとれます。中性浮力を上手くとるためのコツは、以下の7つです。
- 適正なウエイトを使う
- BCDを正しく操作する
- 潜降したらリラックスする
- 水中での姿勢を正す
- 細かい調整は呼吸を使う
- 水深を意識する
- タイミングのずれを把握する
適正なウエイトを使う
ダイビング中に身につけるウェットスーツは浮力が強いため、潜降するためにはウエイトと呼ばれる重りが必要です。中性浮力を上手にとるには、このウエイトが大きく関係します。適切なウエイトの量は、タンクやスーの種類によっても異なります。
適正なウエイトの量を知るには、スーツや機材をすべて装着した上でBCDの空気をすべて抜き、水面に浮いてみましょう。水面が目の高さと同じになるように、ウエイトの量や重さを調整します。ウエイトの場所が悪くても中性浮力がとりにくく、身体の前にウエイトを集中させると、水平の姿勢になり中性浮力をとりやすいです。
BCDを正しく操作する
BCDとはダイビング中の浮力を調整する機材であり、BCDの中に空気を出し入れすることで浮力を調整できます。BCDは微調整が重要であり、少しずつ空気を出し入れしなければいけません。いきなり空気を入れると急浮上する危険もあるので、中性浮力を上手にとるにはBCDを正しく操作しましょう。
潜降したらリラックスする
上手に中性浮力をとるには、心の余裕が必要です。いつもの環境が異なる海中では焦ったりパニックになったりしやすいですが、潜降したらまずはリラックスして心を落ち着けましょう。リラックスできたら、落ち着いて中性浮力をとっていきます。
水中での姿勢を正す
ダイビング中の理想的な姿勢は、海底と水平状態になる姿勢です。水中では頭の向きと身体の向きはリンクしているため、頭が下を向いていたら潜降しやすく、頭が上を向いていたら浮上しやすくなります。そうなると中性浮力はさらにとりにくいため、ダイビング中の姿勢は水平状態を心がけましょう。
細かい調整は呼吸を使う
肺の中に空気が入ると浮きやすく、肺の中の空気を吐くと沈みやすくなります。そのため、ダイビング中は呼吸によっても浮力が調整できるのです。ただし、肺の大きさには限りがあるため、大きな浮力の調整はできません。大きな浮力の調整はBCDを使い、細かな浮力の調整に呼吸を使うことで中性浮力がとりやすくなります。
水深を意識する
水深が深くなればなるほど、水圧の強さが大きくなりウェットスーツやBCD内の空気が膨張するため、浮力が変化します。そのため水深10mの場所で中性浮力がとれていても、水深20mになると浮力が小さくなり、身体が沈みやすくなります。中性浮力は水深によって変わることを理解しておけば、水深ごとに中性浮力がとりやすくなるでしょう。
タイミングのずれを把握する
浮力の調整は、BCDや呼吸を使ってもすぐにできるものではありません。たとえば、息を吸うとすぐに浮くわけではなく、少し時間が経ってから浮き始めます。タイミングがワンテンポずれることを理解しておかなければ、息を吸ってすぐに浮かないからといってBCDを使ってしまい、上手く中性浮力をとれません。
中性浮力のありがちな失敗
中性浮力をとるのが苦手な方は、以下のような失敗を起こしがちです。
- 手を使う
- 上に向かって泳ぐ
- BCDに頼りすぎる
上記のコツとあわせて、これらの失敗を行わないよう気をつけましょう。
手を使う
中性浮力を上手くとろうと、手を動かす方も多いかもしれません。しかし、中性浮力は手を使おうとすると、とりにくくなってしまいます。中性浮力をとるときは、手を使わずに呼吸などを使って調整しましょう。
上に向かって泳ぐ
中性浮力がきちんととれないと、沈まないように無意識に頭が上にあがってしまいます。しかし、頭があがると身体も上に向いてしまうため、中性浮力に必要な水平の姿勢をとれません。正しい姿勢をとれていると思っても、無意識に上を向いている可能性もあるので、ダイビング中の姿勢が気になる方は、インストラクターやバディに確認してもらいましょう。
BCDに頼りすぎる
BCDは浮力を調整するための重要な機材ですが、中性浮力をとるためにBCDに頼りすぎるのはおすすめできません。BCDは空気を入れて浮力を調整する機材であるため、中性浮力をとるためにBCDを使うと、空気の出し入れを微調整する必要があり簡単ではありません。BCDはおおまかな浮力を調整するために使い、微調整は呼吸を活用しましょう。
まとめ
中性浮力とは、水の中で「浮こうとする力」と「沈もうとする力」が均等に釣り合う状態のことです。中性浮力が上手にとれると、エアー持ちが良くなったり急浮上を防いだりできるため、ダイビングには必須のスキルです。中性浮力をとるのが苦手な方も多いですが、今回紹介したコツを参考にすると、上手にとれるようになります。
ダイビングには、中性浮力以外にもさまざまな必須スキルがあります。安全にダイビングを楽しむには、ダイビングに必要なスキルを学ぶためのライセンスを取得しましょう。「東京ダイビングスクール Beyond」では、ダイバーを一番に考えた世界基準のスキルを19,800円で学べます。ダイビングのさまざまなスキルを身につけたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。