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2023年08月14日

エンリッチドエアとは?安全性の高いダイビングを体験しよう

ダイビングの道具
ダイビングは、美しい海の世界を探索する人気のアクティビティですが、陸上と大きく環境が異なるため、普段より安全に気を配らなければいけません。安全性の高いダイビングのひとつに、「エンリッチドエア」を使ったものが挙げられます。今回は、エンリッチドエアの内容や使用方法、メリットなどについて解説していきます。

 

エンリッチドエアとは?

エンリッチドエアとは、通常の空気と比べて、酸素の濃度が高い空気のことです。ダイビング中は空気が入ったボンベを使って呼吸を行い、その中には通常の割合と同じ空気が入っています。

通常の空気は、約21%の酸素と78%の窒素から構成されていますが、エンリッチドエアは酸素の割合が22~40%で構成されています。レクリエーションダイビングで使われるエンリッチドエアは、32%または36%の酸素を含んでいるのが一般的です。

エンリッチドエアとナイトロックスの違い

ダイビングの世界では、酸素濃度が高い空気を「ナイトロックス」と呼ぶこともあります。エンリッチドエアとナイトロックスを混合する方もいるかもしれませんが、ナイトロックスは酸素と窒素が混合された空気の総称です。エンリッチドエアは酸素の割合が22%を超える空気を指す言葉であり、ナイトロックスの一部がエンドリッチエアとなります。

レクリエーションダイビングで使用する空気はエンリッチドエアですが、テクニカルダイビングでは酸素の割合が21%未満のナイトロックスを使用することも少なくありません。エンリッチドエアは、酸素濃度の低いナイトロックスと区別するために、エンリッチドエアナイトロックスと呼ばれることもあります。

エンリッチドエアの歴史

エンリッチドエアは、ダイビング界に革命をもたらした重要な進化のひとつです。その歴史は比較的新しく、1990年代後半になってから広く普及しました。空気に酸素を混合したガスは、医療用として古くから使われていましたが、1990年代後半にエンリッチドエアが導入されたことで、ダイビングの新しい可能性が開かれたといっても過言ではありません。

 

エンリッチドエアのメリット

エンリッチドエアを使用すると、ダイバーにとって大きく5つのメリットがあります。

 

  • 長時間ダイビングを楽しめる
  • 窒素酔いのリスクを軽減できる
  • 減圧症を予防できる
  • 次のダイビングをすぐに始められる
  • 人によっては疲れにくくなる可能性がある

 

長時間ダイビングを楽しめる

エンリッチドエアを使用する大きなメリットのひとつが、通常の空気を使うよりも長時間ダイビングを楽しめることです。ダイビングには無限圧潜水時間が決められており、その時間以上同じ深度に留まるとさまざまなリスクが起こるため。制限時間内に浮上しなければいけません。

たとえば18mのダイビングを行う場合、通常の空気を使うと最大56分潜れます。しかし、酸素濃度が32%のエンリッチドエアを使うと、最大95分潜れるので、30分以上も長い時間ダイビングを楽しめるのです。水中の探索や観察に多くの時間を割けるようになり、より充実したダイビングができます。

窒素酔いのリスクを軽減できる

窒素酔いとは、高圧の窒素を摂取することで起こる中毒症状です。窒素酔い自体は身体に大きなリスクはありませんが、窒素酔いによって思考力の低下や方向感覚の喪失などが引き起こされるため、ダイビング中の窒素酔いは望ましくありません。

エンリッチドエアは、窒素の割合が通常の空気に比べて低いため、窒素酔いのリスクを軽減させられます。ただし、深く潜っていくとエンリッチドエアでも窒素酔いが起こるケースがあり、完全に予防できるわけではありません。

減圧症を予防できる

減圧症とは、ダイビングによる深度の変化により、体内の空気が気泡をつくる病気のことです。エンリッチドエアを使うことで、身体の中に入る窒素分圧は少なくなり、そのぶん早く窒素が体内から排出されます。その結果、身体に留まる窒素が少なくなるため、減圧症の予防につながるのです。減圧症は、最悪の場合命にかかわる危険な病気であるため、減圧症を予防できればダイビングの安全性が向上します。

次のダイビングをすぐに始められる

通常、ダイビングを1本行ったあとは、体内の窒素を放出させるために一定時間休まなければいけません。たとえば、2本目のダイビングに15mの水深を35分潜る場合、1時間以上の水面休息が必要です。しかし、エンリッチドエアを使うことで体内の残留窒素は少なくなるため、水面休息の時間を短縮できます。

人によっては疲れにくくなる可能性がある

科学的根拠は証明されていませんが、エンリッチドエアを使うことで、通常の空気で行うダイビングよりも疲れにくいといわれています。ダイビング中に疲れや目のかすみなどを感じる方は、エンリッチドエアを使うことでダイビング後の疲労感が軽減されるかもしれません。

 

エンリッチドエアを使用する注意点

さまざまなメリットのあるエンリッチドエアですが、使用する際は以下のポイントに注意しましょう。

 

  • 必ずしも安全というわけではない
  • 潜れる深さに制限がある
  • どこのショップにも用意されているとは限らない

 

必ずしも安全というわけではない

エンリッチドエアを使うことで、ダイビングの安全性を高められるのは確かです。しかし、エンリッチドエアを使用しても、ぎりぎりの深度まで潜ると減圧症が発症する可能性もあります。さらに、窒素酔いの症状は軽減できますが、反対に酸素中毒が起こるかもしれません。必ずしも安全なダイビングができるわけではないことを、あらかじめ理解しておきましょう。

潜れる深さに制限がある

エンリッチドエアは、通常の空気よりも酸素の圧が高くなるため、酸素中毒にならないよう気をつけなければなりません。酸素中毒を引き起こす可能性が高くなる深度は、通常の空気の場合は57mです。しかし、酸素濃度が32%のエンリッチドエアの場合は34m、酸素濃度が36%のエンリッチドエアの場合は29mとなり、それ以上深く潜るとリスクが伴います。

どこのショップにも用意されているとは限らない

エンリッチドエアは近年ダイビング業界で広く普及してきていますが、どこのショップにも用意されているとは限りません。エンリッチドエアでのダイビングに慣れている場合、通常の空気を使ったダイビングがやりにくく感じる可能性もあります。さらに、エンリッチドエアを使う場合は、専用の機材が必要になることもあるので、自分の機材を持っている方は新しく用意する必要があります。

 

エンリッチドエアを使う方法

エンリッチドエアにはさまざまな注意点があるため、使用する際は講習の受講が必要です。PADIなど、ダイビングの認定団体ではエンリッチドエアの講習を開催しているので、興味がある方は使用する前に受講しましょう。

PADIのエンリッチドエアコースについて

PADIのエンリッチドエア講習を受けることで、以下のスキルを身につけられます。

 

  • 酸素割合の分析とマーキング方法
  • エンリッチドエア用ダイブ・コンピューターの設定
  • 酸素曝露(露出)についての理解と管理方法 など

 

PADIのエンリッチドエア講習では、eラーニングを使って自宅での知識学習を行えます。2〜4時間程度の学習が完了したら、エンリッチドエアの機材を使ってダイビングのシミュレーションを2回行ったあと、実際に海に入ってダイビングを実践します。PADIのエンリッチドエア講習の条件は、オープンウォーターダイバーの認定を持つ12歳以上の方です。

 

まとめ

エンリッチドエアとは、酸素の割合の多い空気のことです。エンリッチドエアを使ってダイビングをすることで、取り込む窒素の量を減らせるので、減圧症や窒素酔いリスクの減少、長時間かつ休息間隔の短いダイビングができるようになります。エンリッチドエアを使うダイビングには講習が必要であるため、PADIなどの認定団体が開催する講習を受けて、エンリッチドエアを使えるようにしておきましょう。

エンリッチドエアの講習を受講するには、オープンウォーターダイバーのライセンスが必要です。ライセンスの取得は、「東京ダイビングスクール Beyond」にお任せください。安全にダイビングを楽しめるよう、一般的な講習よりも時間が長く、質の高いトレーニングをご用意しております。