海好きの方であれば、海に溶け込むような感覚が得られる「素潜り」に憧れたことがあるかもしれません。素潜りができるようになると、海遊びの楽しみが広がります。一方で、死亡事故につながるようなリスクがあるのも事実です。そこで今回は、素潜りの魅力と安全に潜れるコツを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
素潜りとは?
素潜りとは、スキューバーダイビングで使用するような機材を使わず、自分の呼吸だけで潜ることを指します。スポーツとして記録を伸ばして楽しんだり、海の中を散策したりなど、さまざまな楽しみ方があります。
スキンダイビングとの違い
素潜りというと、海人のような伝統的なイメージが強いかもしれません。ゴーグル以外何も身に着けない原始的な泳ぎ方を指して、素潜りと呼ぶのが一般的です。一方、呼吸機材を身に着けず、マスクやシュノーケル、フィンだけで泳ぐダイビングをスキンダイビングと呼びます。
ただし呼び方に明確な区分はなく、総称として素潜りと表現することもあります。また、より競技性の強いフリーダイビングも、素潜りの一種です。
シュノーケリングとの違い
シュノーケリングは、水面に浮かんで楽しむスポーツです。一方の素潜りやスキンダイビング、フリーダイビングは、水中に潜るのが特徴です。シュノーケリングは気軽に誰でも楽しめるのに対し、素潜りには危険性もあるため、知識や練習が必要となります。
素潜りでどのくらいまで潜れる?
2023年12月時点での素潜りの世界記録は、水深122メートルです。競技者の血液量変化を観察した研究によると、潜水中は腕に配分されていた血液が制御され、生命維持にもっとも重要な脳の血液が増加する変化が生じていました。
この能力は人体に潜在的に備えられており、訓練で伸ばせる可能性があると考えられています。プロほどの記録を目指すわけではなくても、自身の身体能力向上に挑戦できるのも、素潜りの楽しさといえるでしょう。
素潜りは自己流でも習得できる?
海の近くで育った方などは、特別誰かに習わなくても、深く潜れるようになった方もいます。ただし、数メートルの水深でも、危険は付きものです。一人で泳いでいるときに、意識を失うブラックアウトを起こすと、命の危険が生じます。
いきなり深く潜る練習をするのではなく、海で泳ぎ慣れてから、段階的に深さを増していくことが大切です。深く潜る前には、耳抜きや姿勢などの基本的な知識も身に着けておきましょう。また、本格的なダイビングとしての素潜りをする場合はより危険度が上がるため、スクールでしっかりと訓練を受けるのがおすすめです。
素潜りの魅力は?
素潜りの一番の魅力は、身軽なので自由に動き回りやすい点です。海との一体感を得られやすく、自然の中でゆったりとリラックスできます。また、透明度の高い海であれば、魚の群れやウミガメと一緒に泳ぐこともできます。初心者向けのシュノーケリングから始めて、徐々に素潜りを練習できる手軽さも魅力のひとつです。
素潜りのコツ
素潜りを安全に楽しむためには、技術の習得が必要です。ここでは、素潜りで主に重要となる3つの技術のコツを解説します。
- 耳抜き
- ジャックナイフ
- 姿勢
耳抜き
耳抜きは、水圧によって耳内外の圧力が変わり、鼓膜が破れることを防ぐためにおこないます。鼓膜が破れると、平衡感覚を失ったりパニックになったりして命の危険につながるため、ダイビングに必須の技術といえます。
耳抜きの方法のうち一番簡単なものは、鼻をつまみ、喉から耳に息を送るイメージで息を吐く方法です。慣れるまでは1メートル潜るごとにおこない、できなくなったら浮上するようにすると安心です。
ジャックナイフ
ジャックナイフとは、体を水面で直角に曲げて水中に潜っていく姿勢のことです。水面に浮いた状態から、海底に視線を落とします。大きく息を吸ったら腰を直角に曲げ、逆立ちをする要領で水中へ潜っていきます。
このときのコツは、初めに頭をしっかり真下に入れ込むことです。また、足は水中に入るまで動かさないことも大切です。
姿勢
水の抵抗を受けやすい姿勢をしていると体力の消耗が激しく、長く潜っていられなくなります。水中では上体を反らさないようにし、体を水平に保ちましょう。
また、フィンを動かしすぎると、水の抵抗が大きくなります。腰から足のつま先にかけてしなやかに動かし、フィンの振れ幅を小さくするのがコツです。
素潜りの危険性と注意するポイント
魅力が多い素潜りですが、素潜り中の死亡事故も時折起きており、危険性があるスポーツであることも事実です。ここでは、以下の4つの危険性とリスクを避けるために注意すべきポイントを解説します。
- 水圧の変化
- 酸素欠乏
- 船舶との事故
- 海中生物
水圧の変化
水中に潜ると、体は水圧の影響を受けます。ダイビングマスクを着用している場合、マスクが水圧で顔に押し付けられ、眼球が押し出される状態になります。この際、目が充血したり眼球が傷ついたりする恐れがあり、マスク内の水圧変化を減らさなくてはなりません。
また、上記でも解説したとおり、耳は水圧を受けると鼓膜が破けたり平衡感覚を失ったりする場合があります。このような体の変化にパニックを起こし、冷静な判断ができず事故が起こるケースもあるため、注意が必要です。
水圧の変化によるリスクを避けるために、着用するマスクはコンパクトなものを選ぶことをおすすめします。また、地上で耳抜きをよく練習してから潜ることも大切です。
酸素欠乏
呼吸機材を付けないで潜る素潜りの場合、酸素欠乏の恐れもあります。脳が酸欠状態になると、体の防衛反応により意識を失うブラックアウトが生じます。ブラックアウトはとくに、深く潜ってから浅場に浮上するタイミングで起こりやすいです。事故を避けるためには、無理をして深く潜りすぎないことが大切です。また、万が一ブラックアウトを起こしてもすぐ助けてもらえるよう、バディと一緒に素潜りをするようにしましょう。
船舶との事故
素潜り中に起こりやすい事故のひとつが、漁船やモーターボートとの接触、スクリューに巻き込まれるなどです。海上の船舶はスピードも出ており、接触すると大変危険です。
水中から浮上してきたときに船舶にぶつかり、頭を打つと頸椎損傷や死亡につながる可能性もあります。船舶との事故を避けるためには、潜る前や浮上する前にしっかりと周囲を見渡し、安全確保を怠らないことが大切です。
海中生物
場所によっては、人に害を与える海中生物がいる場合もあります。危険な生物の例として、以下が挙げられます。
- クラゲ類
- イタチザメ
- ゴマモンガラ
- オニダルマオコゼ
- ハナミノカサゴ
- ウミヘビ
危険な魚を見かけたらすぐに逃げ、陸に戻るようにしましょう。また、岩にいる危険生物もいるため、海底の岩はなるべく踏まないことも大切です。
素潜りで見つけた魚は捕まえてもいい?
素潜りをしていると、食べられる魚を見かけることもあるかもしれません。水産動植物の採捕については、地域によりさまざまな規定があるため、注意が必要です。
たとえば広島県では、やす・は具・たも網・素手での採捕は認められていますが、銛の使用は禁止されています。また、共同漁業権の対象魚種は、素潜りであっても採捕は認められていません。水産動植物の繁殖保護を目的とした、保護水面が設定されている区域もあります。
勝手に採捕をおこなうと密漁が疑われ、不要なトラブルにつながる場合もあります。素潜りで魚を捕まえたい場合は、地域の水産担当部署に確認するようにしましょう。
まとめ
素潜りは、海で頻繁に遊んでいるうちに潜れるようになり、自然と習得できる方もいます。しかし、数メートルの深さであっても、意識を失うブラックアウトなどのリスクがあるため油断は禁物です。耳抜きや姿勢など正しい知識を身に着け、段階的に練習したうえで挑戦しましょう。万が一に備え、バディを持つことも重要です。本格的な素潜りをしたい場合は、スクールで訓練を受けるのが良いでしょう。
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